集めた資料とキット部品とを照らし合わせて見ると、キットには使える部品は僅かしか無い事が分かってきました。
直感的にこの製作作業はスクラッチ主体で進めなければどうにもならないと悟り、覚悟を決めてじっくり時間を掛けて作ろうと、それまでの安易な考えを変えざるを得ませんでした。
74' DUCATI 750ss の魅力は、何と言ってもべベルギア駆動、丸みを帯びたクランクケースカバーを持つ空冷Lツインエンジンにあると言って良いでしょう。
私がまだ20代後半の頃、初めてDUCATI という車両を見たのは黄色い車体の350デスモでした。
そのエンジンを見た途端に造形の美しさに魅せられ、国産車には無い異国の文化に触れた思いがした事を今でも覚えています。
その後暫く間があって、雑誌で750sの記事を見た時も、同じ黄色い車体に積まれたLツインエンジンに目を釘付けにさせられた事も未だ色褪せない記憶となって蘇ってきます。
いつか将来、跨るだけでも・・・と夢を見たものでした。
プロターのキットは10年以上前に入手していましたが、私が作りたいのは750ssイモラ・レプリカの方。 20年ほど前にタミヤ 1/12 の 900ssを作った事が有りましたが、自分のイメージとは違う物でした。 1/12 900ss を750ss に改造出来る程のスキルは無く、道具も材料も有りませんでした。
本気になってモーターサイクルモデルを作るようになって10年近く経ち、プロターキットの完成作品も増えてきました。 その間、部分的ではあるけれどスクラッチで部品を作れるようにもなってきました。 過去の作品でいろいろな練習を積み重ね、ある程度自信が備わってきたと思えたので、長い間暖めておいた計画を今回実行に移した次第です。
キットベースに製作を始める前に、資料集めを行いました。 書籍はもとより、ネットからは沢山の画像を拾う事が出来ましたが、100%集められたかというとそうでも無い部分も沢山有りました。
最初に手を掛けたのはこのモデルの主役たるエンジンから。
実物の寸法は分かる筈も無く、どこかにポイントを合わせて割り出さなければ計算すら出来ない有様、その結果資料画像はどんどん増えていきました。
寸法が決まれば、材料との折り合いを付けるためにプラ板の合板作り。
両シリンダーの高さをぴったり合わせるために神経を使いました。
オイルパンの造形も、足りないドレンプラグを追加したり、冷却フィンを貼り直したり・・・出来るだけキットの部品を使おうとしても、そのままストレートにとはいきませんでした。
エンジン関連部品のデストリビューター、40パイデロルトキャブassy、マニフォールド等々自作部品が次第に多くなりました。
フレームはタンクレールとステム部分、それとエンジンマウント部だけを利用、後はプラ棒で作り直し、シートレール幅を詰めシートとシートエンドを細身に作ってスリムさを出しました。
ショックマウント上下の位置も外側に移動させ、幅詰めによる誤差を修正してあります。
一般的なスポークの張り方とは違う方式のDUCATI のハブをどうしても再現したくて拘りを持って作りました。
ドラムブレーキに慣れていた私にとって、ディスクブレーキ・キャリパーを作るのは初めて。
フロントサスペンションassyのスクラッチは3度目になりました。
今回もフェールタンクはケミカルウッドを素材としました。
シートエンドも今回から同様の素材を使い、時間短縮を図っています。
シート面は相変わらずプラ材を使い、彫刻と塗装で質感表現をしています。
ケミカルウッドを素材として、過去数回の工作をした事は素材の性質を知る上で非常に有益な経験でした。
今回このモデルを作るための下地に十分役に立ってくれました。
この経験が無かったら・・・カウルをどうやって作ったでしょうか、多分このモデル自体を作らなかったかも知れません。
出来るだけプラ材で作ろうとしても上手く行きそうに無い部分は金属に頼るしか有りません。
キックアームは芯に真鍮パイプを使い、回りを溶かしたハンダで盛ってから削って作りました。
アームの根元はハンダその物を溶かし、冷えて固まった塊から削って作りました。
私にとって、有る工具はヤスリとカッターくらいです。
エキゾーストパイプも前作に練習製作した事を踏まえての応用でプラパイプのつなぎ合わせで。
プロターのキットをベースに作ろうと計画した DUCATI 750ss は、初期の段階からスクラッチビルド状態に陥りました。 結果、キット部品の利用点数は20点ほど、製作部品総数は1500点を軽く越えてしまいました。 憧れだったモデルは今、模型となって私の模型棚に並んでいます。