Gallery of PROTAR 1/9 MV AGUSTA 500 4 cli

 アグスタを猛烈に作りたいと思った切っ掛けとなった一枚の写真を元にした絵は、ネット検索で見つけた輪郭のハッキリしない絵でした。
 しかし、プロターのアグスタの完成写真とはあまりにもかけ離れた美しさが見て取れ、キットを元にどうやって近づけるか・・・その日から頭の中はその事ばかり考える様になってしまいました。  上のカットはその一枚の絵と同じアングルで写してあります。

 資料集めにはもっぱらネット検索を主体に進めました。  しかし、カウルが付いた写真が殆どで、見えない部分がなかなか判明しないまま時間が流れて行きました。
 

 写真という2次元の物からは当然奥行きが全く分かりませんでした。  必然的に多方向からの写真集めが必須となりましたが欲しい写真は思うようにはなかなか集まりません。
 馴染みのバイクショップに行き、別冊モーターサイクリストやクラブマンなどのバイク雑誌から見つけようとしたり、Google のイメージで検索したりの毎日が続きました。

 資料となる写真が見つかった時は子供のように飛び上がって、もう出来たも同然と大喜びしたものでした。
 不思議なもので、ホームページに連載し七転八倒するその様子を見て色々な方から応援の写真提供を頂きました。
 大変な力を与えて頂き、またその全てがアグスタ作りに役立ち形作りに結び付ける事が出来ました。

 今回のアグスタ製作に於いて、今までの手法から一歩踏み出して自分にとっては初めての手法に挑戦した部分が数多く有りました。
 @リムをH型リムに改造、Aブレーキドラム、ブレーキパネルのスクラッチ、Bフロントフォーク、トップブリッジ、ハンドル、メーター等フロントセクションのスクラッチ、Cエンジンの大改造、シリンダーフィンをプラ板積層、ヘッド改造、オイルパン改造、キャブ周り、クラッチレリーズ等々、Dフレーム改造、Eスイングアーム大改造、ピボット位置変更にに伴う部品のスクラッチ、Fケミカルウッドを使用したフェールタンク作り、シートとシートエンドのスクラッチ、Gマフラー改造、Hエッチングチェーンの組み付けと前後スプロケット製作・・・・数え上げたら自分でも驚くほど多岐にわたった改造と修正。
 キット部品をどこに生かしたのか忘れてしまうくらい自作部品の数が多くなっていました。

 使う材料にも多少の変化が見え始めてきました。  プラ板一辺倒からアルミ材、真鍮材を適材適所に使い強度と見た目の効果を図っています。
 しかしボルトの頭やナットは全てプラ板を切り出して作っています。

 製作上殆どの部分が現物合わせで作り上げて行くので、作業に取りかかる前の段取りを考える時間が長く掛かり、現物を眺める時間も当然の如く長く掛かってしまいます。  プロヴィーニおじさんの仕掛けた罠がアチコチに隠れていて、うかつにキットのモールドを信じて作っていくと大変な事になってしまいます。   

 実車との検証が進み色々な部分で角度の違い、形状の違いを直しながら作ることは半分スクラッチしている事と同じです。
 このアグスタは自分のイメージを大切にすることだけを大前提に、実際に存在する個体を作ろうとはしませんでした。  色々な資料をかき集め、その中から選り集めた部品を寄せ集めて作ったと言われればそれまでですが、僕にとってのアグスタのイメージはこうなんだという作例も有っても良いのではないでしょうか、それも模型作りを楽しむ一つの方法だと思います。

 クラシックレーサーに多く見るタンクバンドも実際の物を見たことは有りません、資料写真も詳しい写真が少ないので多分こんな構造だろうと思いを巡らし、自分に出来る工作をした結果です。

 一番最後まで分からなかったフェールタンクの先端部分の曲面、そのセクシーとも言えるカーブがこのバイクの最大の特徴だと思います。  大凡の形状が掴めたとき、どういった方法で作れば出来るだろうかと随分考えました。  いきなりプラ板を箱組して削る事も労有って甲斐無しのような気がして、フレームに被さる先端の内側を現物合わせで削って行くにも、プラでは薄さに耐えられないのではないかと不安な要素も有りました。  結局、以前サンプルで取り寄せていたケミカルウッドの一番硬い素材を使うことで問題は解決、終わってみれば何て事無い作業でした。  この素材の使用は僕に取っての一大発見で、多分使用量や用途が多岐にわたり増えることでしょう。

 以前は虫ピンの頭を小さくしてリベットの様な小さな部品を作る事はあまり多く無かったのですが、バイクを作り始めてから虫ピンの加工も必須となり、リューターと砥石が大活躍するようになりました。

 11ヶ月という製作期間の内実際に手を動かせた時間はどのくらいのことだか自分でも分かりません、考えている時間が半分以上になっている事だけは言えるでしょう。   例によってプロヴィーニおじさんとの会話に終始した時間も多かった気がします。  楽しく飽きさせない時間を一年近くも僕にくれたプロターに感謝すると共に、応援して頂いた皆様にこの場にてお礼申し上げます。

 パッケージの写真はプロター社純正H型アルミリムとスポークを使用して組み立てられた完成写真です。

 その他の改造は無く、キットをストレートに組み立てるとこうなりますと言う見本ですが、本物のイタリアンの駿馬はパッケージ写真からでは想像も出来ないほど目の覚めるようなスタイリッシュでグラマラスで魅力に満ちた車体の持ち主でした。