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 一度通り過ぎた道を再び通ろうとする事は、余程人から頼まれない限り通る事の無かった私ですが、岩手のイーハートーブフェスティバルの模様をTVで見ていて、昔自分もTLR200Rやスコティッシュなどのトライアル車で一時は凝っていた事を思い出し、今では叶わぬ夢となってしまったトライアル遊びが懐かしくなり、せめてもう一度模型の世界だけでも其の雰囲気に浸りたいと思い、気に入っているこの車を作ろうと思いました。

 このキット、かれこれ10年前に一度作っています。
 当時通販で多分4千円位で買い、バイク模型初心者だった私は苦労しながら作った思い出が有ります。
 アオシマの TY125 と同時製作でしたが、 1/8 はやはり手が掛かり完成したのは暫く後になりました。

 完成した2台のTY125は暫くして猛烈に欲しがる方に2台ともお譲りしたので、手元には残っていません。
 手放すと何とも寂しいもので、いつか又機会が有れば作りたいとかねがね思っていたところ、最近になってオークションで当時の半額で入手出来、凄く喜びました。
 前作では苦労した部分も今のスキルでどういった作り方やアレンジの違いが出るのか、自分でも楽しみにしたいと思いながらセクションをスタートします、全てのセクションを上手くクリーン出来るでしょうか。

 全く同じキットなので今更動じる事は有りません。

 スポークの張替え作業も今ではすっかり定着したいつもの方法です。

 前作ではスポークモールドを利用して冶具を使わずに半面づつ張り替えて合わせ、中央の溝消し処理をして塗装していました。

 ハブの工作にとても気を使い整形するのが大変だった記憶が残ります。

 スタートしようとした矢先に事件が起きてしまいました。

 通常メッキ部品は全てランナーから切り離し、漂白剤に漬けてメッキを剥がします。

 クロームメッキの場合はメッキの下地コートが有るのでもう一度シンナーに漬けて剥がすのですが、其の段階でドジりました。

 今まで使っていたシンナーに新しく仕入れたシンナーを補充して漬け込み、ピンセットで掻き回しながら剥がれる様子を見るのですが・・・今回は用足しで暫く外出したのでそのまま放置していました。

 今まで使っていた物より強かった様で、シンナーはモールドを溶かし、プラそのものをも軟らかくして、下地コートはこびり付き無残にも変形させています。
 これでは修復は不可能、メッキ部品の全てをスクラッチしなければならなくなりました。

 そう言った意味では前途多難なスタートになってしまいました。

 一番先に手掛けたのは何と言ってもホイール部品のリムからでした。

 リムを改造したことは何度も有りますが、ゼロから作り出すのは今回が初めての経験、ここまで仕上げるのに丸二日掛かりました。。

 難しそうなフロントのリムをプラ板で作っています。

 中央部の盛り上がりを別に作ろうか・・・それとも一体で作ろうか迷いましたが仕上がりの良さを考慮して一体で・・・と言っても積層で形を作っただけですけどね。

 裏側の処理もキット部品を参考に仕上げています。

 1/8 ということで材料は厚みの有るプラ板を使いましたが、1/12 くらいならもっと薄い材料で楽に出来るかなっと思いました。
 

 タイヤを嵌めて見ました。

 サイズはキット部品のやや幅が狭いところを直して若干広くしているだけですが、キット部品よりもガッシリとしたリムに仕上がり、予め作っておいた冶具にもピッタリです。

 スポークニップルの裏側への飛び出しを考えてタイヤの方を少し細工しています。

 面倒でも作る気が有れば、リムなんかもスクラッチ出来る様になりました。

 今回の事故は結果的には成果に結びつきそうな気配です。

 続いてリヤを作ります。

 こんな感じでプラ板を重ねて削り込んでいきます。

 前後のタイヤには申し訳程度のメーカーのロゴが浮き出ています。

 リヤも出来上がって前後リムの再生作業は終了、やれば出来ると言う事でスクラッチ出来る範囲がまた広がりました。

 オシャカにしたメッキ部品はホイール関係と前後のサス、ハンドルバーとライトの反射鏡一体のライトリム、メーターくらいです。
 ライトリムが少し面倒かも知れませんね。

 ホイール関係で次は少し面倒なブレーキドラム作りに入ります。

 フロントブレーキドラムは直径18mm、ブレーキパネルまで含めた幅は15mmで作っています。

 サイズや厚みの違う円盤を何枚も切り出して整形するのはシリンダーフィンを作る事とまた違った難しさが有って神経を使います。

 特に気を使うのは滑らかな曲面部分です。

 リムにニップル穴を開ければ、取り合えずフロントは一段落です。

 前後のハブとリムの穴開けが無事終了、塗装を待つばかりになりました。

 オシャカにしたインナーチューブに変えてピッタリサイズの伸縮アンテナの一部分を使っています。

 この部分は前作での教訓を生かして今回の事故が無くてもこの方法で作り変える予定でした。

 プラスチックと金属を混ぜて使う時には、接合方法で頭を使います。

 瞬間接着剤と金属の相性が合えば問題は無いのですが、なかには相性が悪く剥がれ易い物も有る様です。

 さて、仮組みですが、トップブリッジには両サイドの締め付けボルトとナットのモールドを削り落とし、アルミ棒を挿入、中央部のステムシャフト締め付けボルトもアルミ棒に換えてナットで塞ぐ用意をしています。

 インナーシャフト上部にはライトハウジングステーが取り付くのですが、コンペ仕様だとそれは不要なのでどうしようか迷っています。

 それと左ボトムケースに有るメーターステーも同様で切り落とすかどうしようか・・・。

 ホイールシャフトはキットではシャフトを左右から挟む形で組み付けますが、貫通式に変えています。

 付けるか付けないか決まられぬままにライトハウジングステーを作っています。

 材料は0.3mm厚のアルミ板、少し薄いかな?っとも思いましたが、軽量化ということで。

 キット部品のステー位置はトップブリッジ直下、しかもステーは斜め上方向に向いています。

 そのためライト位置がかなり高い所に有るので、やけに首が長いスタイルに見えます。

 ステーは人によって取り付け位置や方向もマチマチなので、此処は私の好みで中間に位置した真っ直ぐなステーを作ってみました。

 ライトを付けるとなればライトリムや反射鏡も作らなければなりません・・・どうしようか・・・まだ迷っています。

 コンペチション仕様にしたい気持ちがどんどん強くなってしまい、タンクとシートが一体になったFRP製のタンクを作りたい、そんな気持ちで標準タンクの内側の部品を使って紙で切った貼ったで形を出そうとしています。

 コンペ仕様のタンクやシート、マフラーなどを装備して、なおかつ保安部品も付けた車体はいくらでも見掛けますからあながち不自然とも思えません。

 其の線で行きましょうか。

 っと言う事で、紙製の型を参考にプラ板で本格的に作り始めています。

 シート部分が先に進み、大まかな形が出来てきました。

 タンク部分はパテを盛り付ける前にガイドとなるプラ板を2箇所立て、ポリパテで埋めています。

 多めにパテを盛ってガイドが出てくるまで形を整えながら削る方法、左右対称に削るにはこの方法を用います。

 右側にも同じ処置を施してからパテを盛っています。

 サイドのスカート部分はマフラーを避けてプロテクターを兼ねた形にしています。

 この部分だけ左右非対称になります。

 ベースに使ったキット部品の面影は全く消え、オリジナルのタンクを想像する事はもう出来ません。

 ポリパテが固まって削りだしに掛かっています。

 予め埋め込んでいたガイドが案内になっているので安心して削り込んで行けました。

 大盛りにしたポリパテは結構削るのは容易な事ではなく、ヤスリの目に詰まったカスを何べんも落としながら慎重に削っていきます。

ラッパの様な広がりがあったシート後部、フレームから余計なはみ出しが無い様にすぼめたデザインに変更して作り直しています。

 スカート部分も仕上げに入っています。

 プラ板の合板で作っているので厚みを薄く仕上げているところです。

 全体を細身にして、なおかつスリムに見える様に、タンク後部から先端に向かって逆Rに削っています。

 フェールコックの取り付き部を工作、フェールキャップが付けば外見はほぼ終了、後はシートラバーだけとなっています。

 次にフロントフェンダーを改造します。

 ノーマルはステーの無い平凡な形の物ですが少し雰囲気を変えてみたくなって真鍮を使ってステー作りから始めています。

 取り付け位置を確定させるためノーマルフェンダーを定規にして、ボトムケースに取り付ける位置とフェンダーとステーの位置を決めるためブラケットを4箇所設けて虫ピンで固定位置を決めています。

 此処までの事前処理が済めばフェンダーの加工に入れます。

 ノーマルフェンダーのボトムケース取り付け部分を切り落としてカーブを付けますが、先端に行くにしたがって被さり具合が浅くなっているので、全体を均一な被さり具合にするためにプラ板で補い整形しています。

 フェンダーの整形が終わって再度ステーと仮組み、その後フロントサスを仮組みしてボトムケースにフェンダーを仮組みしてステーの幅を調整しています。

 クランクケースの中に糸ハンダを仕込んで重心を下げる加工をしてから左右の部品を接着、クランクケース部品はそこらじゅうにヒケが有り、シリンダーの取り付く平面も出ていないのでパテを盛ったり削ったりの作業をしなければなりません。

 シリンダーは8枚の積層で組み立てられますが、下から3枚目に誤りが有るので修正しています。

 シリンダーヘッドのフィンがどう言う訳か埋まっていて修正しなければなりませんが、裏側も肉抜きされていて空洞になっています。

 そのまま削り込んでしまえば突き抜けて穴だらけになってしまうので、ポリパテを充填しておきます。

 埋まっているフィンの間を彫り込んでいますが、直ぐにパテの層になりました。

 フィンを折らない様に気を使います。

 寄り道を戻して、駄目にした部品のスクラッチをしています。

 キット部品のショックボディーは径が3.5mmほど有ります。

 プラ棒の在庫には其のサイズが無いので、3.5mmアルミ管にプラ棒を通して作ることにしました。

 上下の取り付け部分はプラ棒を使っています。

 スプリング受けの部分をプラ板で作り、下の受けにはキット部品では再現されていないスプリングプリロード調節機構も付けています。

 スプリングは園芸用の被服線を使って不等ピッチにして作りました。

 これでリヤショックの部品は全て揃い、塗装出来る様になりました。

 失われた部品をどんどん再生していきます。

 ハンドルバーの再生は3mmプラ棒を使います。

 幾分太めなので蝋燭で炙って曲げて少し凸凹になった所を含め全体を削って細くなる様にしています。

 レバーやグリップが嵌る部分は真鍮棒を差し込み、取り付けられる様に加工しています。

 各カバーを取り付けるボルトやビス類の頭を削り落とし、アルミパイプを埋め込んでいます。

 駄目にして作らなければならない部品はチェーンテンショナーとライトリム、それとキックアームになりました。

 テンショナーは実際にチェーンを張った状態で作らなければチェーンラインに合った物が作れないので先ずチェーン作りから始めています。

 前回チェーンを作ってから4ヶ月足らずなのでコツは鮮明に覚えているので完璧に仕上げられる自信が有ります。

 そこでいつもの様にコスモズファクトリー製のエッチングチェーンを切り出します。

 切り出したコマのバリを落とし、半数を黒染め液に漬けて準備が整いました。

 黒く染めたコマはコスモズファクトリーの作例を模して内側に使い、表情に変化が付くか実験しようと思います。

 少しコマを繋げたところで様子を見ています。

 明るいところで見ていますが、何となく外側のコマだけが強調されている様で良いんじゃあないでしょうか。

 チェーン組み立てが進んで来たのでスプロケットを作ってしまいます。

 ドライブスプロケットは減速比が大きいせいか歯数12Tの小さな物、直径6.5mm程。

 小さくてもピッタリ駒に合わせる事を要求されます。

 リヤスプロケットは逆に大きく直径27mm程有ります。

 全手動ボール盤・・・要するに手作業なので正確さに不安はいつも付き纏いますが、今回は慎重に正確さを心掛けた所為か、多少の微調整だけで一発OKでした。

 前後スプロケットの板厚は0.7mm、チェーンのローラー幅を0.8mmとして今までよりも隙間を抑えています。

 そのために一番気を使ったのがチェーンの横方向の振れ、右端の駒を中心につまんで、時計の針の様に右回りにスライドさせた状態での振れを見ています。

 ここまで直線に近い出来は今迄出来ませんでした、ローラー作りの正確さが功を奏したのかも知れません。

 チェーン自体もシッカリと組み上がっているので、この先の組み付けが楽しみになってきました。

 チェーンが出来ました。


 広角で撮っているのでキット部品が小さく見えますが、真上から見れば同じ大きさ、同じ長さになっています。

 この時点で既にチェーンは繋いでしまいます、後は組み方次第です。

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TY125
YAMAHA
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