依頼製作
名古屋在住のN様から今回製作の依頼を受けました。
ご自身も欧州からの逆輸入車のCB400Fourを所有されており、年式の割にはかなり程度が良く、大事にされている様子が伺えます。
輸出仕様なので当然408ccのエンジンとフレームで、8年前に私がキットを改造して製作したモデルと同じモデルになります。
当時のネット社会は現在程情報が溢れていなかったので見たい画像も多くは集まらず、分からずじまいで想像で作った部分も有りました。
現在では情報はかなり入手可能なので見た目???な部分は出来るだけ直しながら製作を進めて行こうと思っています。
製作に使用するのはプラモデルとして唯一存在したナガノの1/8 キット、現在では絶版でプレミアが付いているようですが、8年前作ったキットを何時買ったか覚えていませんが、馴染みの模型店で普通に買ったのを覚えています。
キットとしては大変良く出来たキットと思いますが、多少誤りやニュアンスの違いが有るのは事実で、あまり弄らず完成させると何処か感じの違うCB400Fourになってしまいます。
これはプラモキット全般に言える事なのですが、作るモデルの実物に詳しくなければ大した問題では無いのでしょう。
私の製作スタートはもう通例となったと言ってよいホイールの改造のための冶具作りから始まります。
次に全てのメッキ部品を漂白剤の原液に漬けて落としてしまいます。
この時点ではクロームメッキの部品は下地まで落とす事が出来ません。
薄く黄色味がかった色の部品がそうで、メッキ部品の大半を占めています。
クロームメッキ部品の下地をそのままにして塗装すると、最悪の場合その下地が溶けて浮き上がり醜い肌に変貌してしまい、修復する為に多大な手間と時間を要する事になってしまいます。
そうならない様に必ずシンナー(塗装用薄め液)に漬け込んで下地が浮き上がって剥がれるまで時間を掛けて剥がします。
このキットの場合は結構頑固なので12時間ほど漬け込みます。
スポークモールドを全て切り落とし、表面を整形していますが、前作でもどうしようか迷ったニップル根本のリムの膨らみ、取り合えず僅かに残す方向で整形してみました。
しかし、やはり結論は同じでこの部分は残さずに削ってしまう事に決定。
理由は整形した面が綺麗に繋がらないおそれが有る事と工作上膨らみ部分に亀裂や破損を起こしてしまい醜くなってしまう事、リム裏側からの彫り込みを難しくしてしまう等良いイメージが浮かばないからです。
面の綺麗さを求めるか、綺麗さよりも僅かな膨らみを残したいか価値観が分かれる所ですが、私としては前者を優先したいと思い、どのモデルを作るにしても殆んどの場合膨らみには拘らない事にしています。
リム裏側の下処理をしています。
タイヤが嵌るガイドの凸モールドの幅が広く厚く有りますが、工作上余分な厚みで後の塗装時の持ち手が無い事などの理由で中央部を深く削り込んでいます。
この部分は出来れば薄い方が工作しやすく、労力や工作時間、接着剤の消費が少なく上がり、ドリルの折損も抑えられるといった云わば省エネ対策とでも言えます。
膨らみを削り落とす前に念のため膨らみの位置が正確なのかを確認するために冶具に嵌めて見ています。
僅かながら部分的にズレが有る様ですが工作上問題になる程では有りませんでした。
しかし、前述の様に表面は綺麗に落として次の工作に移って行きます。
リムにはニップル穴、ハブにはスポーク穴を開けてホイール部分の工作は終了、塗装の準備が整いました。
エンジンの改修に取り掛かっています。
このキットの説明書では2番3番のプラグ取り付けが前後逆になっていたり、クラッチケーブルがフロントブレーキに繋がっていたりと間違った組み立てを指示していますから、そこは修正しなければいけません。
フィンの枚数は本来シリンダーが8枚、ヘッドは7枚有りますがキットではヘッドフィンは6枚しか有りません。
この枚数の修正はスクラッチしか有りませんが、ヘッドを修正するとシリンダーにも影響が出てきて、全てをスクラッチしないとバランスが取れなくなってしまいます。
また、シリンダーフィンもキットモールドでは厚みが0.7mmほど有って実寸6mmほどになってしまい、どう見ても厚過ぎです。
枚数の修正はせずフィンを薄く削ろうと思いますが其の前に目安が分かる様にフィンの縁を黒く色を付けています。
向かって左側のフィンをザッと削っています。
フィンの削りこみは側面だけでは無く、周囲まで全体にわたり均一に削り厚みを0.4mm以下にしていきます。
また削り込みはフィンの先端部分だけでは無く奥まで削って斜めにならない様に慎重に時間を掛けて削ります。
これにより実寸にして3mmほどになり、空冷エンジンの繊細なエンジンの造型を再現しようとしています。
白い素材はそのままでは形状が掴みにくいのでシルバー塗装の下地に塗るブラックを吹いて様子を見ています。
概ね目的は達した様なので次の工作に移りましょう。
キャブの取り付き側ですがインシュレーターが有りません。
そこで元々開いている穴にインシュレーターとなる造型を作っています。
5mmのプラ棒を使って1.5mmほどの突起を作りました。
この作り方は前作とは違います。
キャブ右側のエンジン取り付け用のモールドを上段3個の様に締め付けバンドの部分で切り落とします。
キャブは先にエンジンに取り付けたインシュレーターになる突起に付く様になるので、短いインシュレーターが再現出来る訳です。
クランクケースの前側に有るエンジンマウントのモールドは、ブラケットのピンを受けるただのU字溝になっているだけ。
蓋をしてピンが通っている状態を隠します。
また、足りないモールドも追加しています。
クランクケースとオイルパンの中には重心を低くする為に糸ハンダ入れています。
全体に艶消しブラックを吹いてから同じく艶消しのシルバーを吹いて、エナメルのブラックと茶色を混ぜた色でウォッシングしてトーンを落としています。
エンジンの塗装は始まったばかりで、この先の色付けはエアブラシは使わずに筆で色を付けて行きます。
キャブレター部品のモールドはフロートチャンバーに若干のヒケが有る他は概ね良好なので、ヒケを修正したほかにボディートップの蓋のビスを作り直し、チョークレバーを浮き彫りにして立体感を出し、4個のキャブを連結させるためスロットルシャフトにアルミ棒を通して位置決めをしています。
エンジンへの取り付け用に両端のキャブにダボを付けて接着しやすくしています。
塗装はフラットシルバーをベースに手が届かない部分の汚れ表現のためにウォッシングを強めに、その後軽く拭き取り、その上にメタリックシルバーでドライブラシを軽く掛けています。
キャブレターの後部に有るのはエアクリーナーボックスの一部で、仮組みの時にバラバラにならないための物。
ダボ穴とダボの位置がピッタリなので正確に取り付け出来る事を確認。
後部右側。
4本のホースはオーバーフローパイプで、クランクケース後部の外壁に沿って下へ向きを変えます。
インシュレーターのエンジン側取り付けボルトが省略されているので、8個のナットを作って貼り付けています。
後部左側。
経年変化でのヤレ具合、落ちない汚れなど左右にバラつきが無い様に細かくチェックしています。
エンジン右側の部品はプラグ以外は殆んど取り付けが終わりました。
ポイント用配線もこの時点で終わらせてしまいます。
エキパイフランジの取り付き角度がシリンダーの垂直線と平行だったので、5度程度下に向けて取り付けて修正しています。
これでエキパイのカーブに違和感を感じていた部分の修正の土台が出来ました。
左側はチェーンカバーとプラグを除きほぼ終了。
ダイナモの配線も完了
メッキ仕様の鉄リムの塗装が終わりました。
メッキを落とし地肌の部品はかなり肌が荒れていました。
メッキの下地コートで隠しているので普通なら分かりにくい部分ですが、メッキを剥がし下地コートも剥がすとモロに見えて来ます。
ペーパーを丁寧に当てながら下地の塗装と研ぎ出しを何回も繰り返して表面を滑らかにしないと綺麗な面を作る事が出来ません。
リムが完成し、ハブとブレーキドラムの塗装も終わりました。
スポークは0.4mmステンバネ線を使い、内外用のスポークをそれぞれ36本ずつ作り、ニップルを72個作れば組み上がるまで3時間くらい、ニップルを塗装しエアバルブを作って取り付ければホイールの完成です。
リヤブレーキドラムの内側はキット部品のままでは型抜きの関係かフィンのモールドが省略されています。
表情を付けるためにプラ板を細く切り出して巻き付けて貼り、削って丸みを出しています。
フロントのハブは段々が付いていて、それ程ハッキリとした違和感を感じないのでそのまま使う事にしました。
ホイールシャフトは付属部品の長ネジの寸法が短くボトムケースの表面に届かないということで2mmプラ棒を使う事にしました。
これと同様の処理をリヤシャフトにも行います。
ボトムエンドは表面が平らで実際の表情と違うため彫ってモールドを付けて、フェンダーステー取り付け用の穴も一旦埋めてしまいます。
フェンダーステーは前作同様アルミ棒を使いますが、今回は若干太い1.2mmの物を使います。
フェンダーに取り付けるボルトは前後共2本で、キットの1本ではありません。
フェンダーに開いている取り付け穴を埋め新たに0.5mmの穴を開けて虫ピンでステーを止める様にしています。
ボトムケースに取り付ける部分は2mm幅くらいに押し潰して整形、後に取り付け穴を開けてます。
フェンダーブラケットの取り付けリベットが省略されているので、金属ピンを作って代用するための位置に0.8mmの穴を4箇所開けています。
ボトムケース側のステー取り付け位置も確定、ステーの取り付け部分を整形してそれぞれのピン穴に座繰りをすればステーも完成です。
これでフォーク関係の塗装準備が整いました。
後部フェンダーステー右の内側にはメーターケーブル用のクランプが有ります。
ステーに若干の深さにドリルを当て洋白線で作ったクランプをはめ込みました。
フェンダー左のブラケット付近にはブレーキホース用のクランプが有るので、ステンの針金で工作、ブッシュラバーを嵌めています。
フェンダー右後部に有るメーターケーブル用クランプ。
ランナーを炙って溶かして平らに潰してから削り出して作りました。
ブレーキパイプの取り付き位置の変更とそれに伴う形状変更、省略されているブリーザーの追加工作です。
キャリパー裏側は省略されていて全く無いためプラ板で造型、ローターと干渉しない様に作っています。